ビジネスの種を見つけた人にお金を預けて、分け前を期待する。
お金を預かった人は混沌に突入し、てんやわんやの成長痛に耐えて事業を伸ばす。
これが資本主義の原動力。
勉強会で取り上げたマウスコンピューターの歴史はまさにその典型。
会社設立から24年。成人式を越えた青年企業でも、悪戦苦闘は現在進行形。
上場企業の経営陣には、立ち止まることが許されない。
市場経済をけん引するリードオフマンのご苦労には、素直に敬意を表したい。
勉強会の議論の中で、同社(=MCJグループ)の理念がよくわからないという話題が出たので、飲み会を経て一夜明け、ちょっと考えてみた。
事業の柱はパソコンの製造販売。
事業モデルは客の注文を受けて作るBTO(Built to Order)。
しかも独自の部品がなく、種も仕掛けもない「ホワイトボックス」メーカー。
他社が作った部品を組み合わせるだけの潔いビジネス。
客の注文にひたすら忠実に、素早くローコストで組み立てる。
客の注文から製造工程が動き出すビジネスは、特に珍しいものではない。
建設業や印刷業も標準品を売っているわけではないので、BTOと言えばBTO。
それでも客より売り手の知識が豊富なので、売り手の提案という付加価値が含まれる。
知識・情報の非対称性が付加価値の源泉で、それがすなわち「ブラックボックス」である。
パソコンは、客が詳細スペック指定が可能。
特に業務用やゲームのヘビーユーザーは売り手よりも知識が豊富。
スマホのようなデザインや操作性の争いもなく、ブラックボックスが作りにくい。
かくして、客の代わりに部品を買って組み立てる、徹底した「下請け」機能の追求が同社を成長させた。
とはいえ、これは簡単なことではない。
大量の注文に応じた部品の調達、不良部品の排除、組み立て工程の無駄の排除。
そして知識豊富なユーザーの注文やクレームに応えるサポート体制。
そういった、製品そのものとは違った、部品流通や在庫形成といったロジスティクスのノウハウが同社の競争力だろう。
同社はこれまで、病院のレセプトシステムやアパレルEC事業などを傘下に収めては売却することを繰り返してきた。
どうやらパソコン販売の先にある、IT利用の価値を創造するのは苦手なようだ。
経営陣も、創業者の他は財務・金融系のキャリアの方ばかり。
よって、乃木坂46などのCMで華やかなプロモーションを展開している同社であるが、IT社会を個人ユーザーレベルで支えるインフラ企業と考えるのが妥当なように思われる。
鉄道事業者や物流業者と同様、「縁の下の力持ち」のポジションを全うすることが、同社にフィットする使命、理念ではないだろうか。
全くの外部者の思考実験ですが。