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AIが私たちを幸せにするとすれば

集会自粛ムードの中、少人数の勉強会「ロリケン」を実施。課題図書は昨年末の年間書籍ランキングで絶賛されていた『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス、 2019年)。

著者はギリシャの元財務大臣。娘に語る本ということで斜め読みも可能だが、文明論的な内容なのでじっくり味会うのもいいかなと思い、ピックアップ。

 

工業製品だけでなく、土地も人も取引可能な「商品」にして市場で売買されるのが市場社会。すべての商品は価値がお金で表示・評価され、利益追求の資本主義の要素として市場に放り込まれる。

すでに世の中はGAFAに代表される巨大企業による勝者総取りの社会。

これからAIが進化、普及するとますます一部の勝者とその他に人々に分かれて格差が拡大し、消費者としての購買力が低下する。

AIは個人の欲求、欲望を先回りして「快適な人生」をもたらしてくれるが、これはユートピアどころか人間らしさをはぎ取るディストピア。

AIのような圧倒的に社会を変える技術は社会の共有物として国家が管理し、すべての人々に利益を配分した方がいいんじゃないの。

あらすじはざっとこんな感じ。

 

古典的な共産主義は、勃興する工業社会を背景として、資本主義を資本家が労働者を搾取する制度とみなす。

工場などの生産手段を社会の共有財産にし、本当に価値ある労働をしている労働者が社会のイニシアチブをとるべきだ。

こういった論旨展開と構造は同じ。

来年のアメリカ大統領選挙に向けた民主党予備選挙では強硬左派のサンダースさんが人気のよう。勝者総取りの世の中がどうもおかしいと思っている人が増えているのだと思う。

 

ところで、新型ウィルスの影響が身近になってきた。

中国でつくっている店舗資材、住宅資材の在庫がなくなり、新築・リフォームがままならなくなっている。

日本の震災のときにも露呈したが、サプライチェーン上の在庫を極力しぼっているので、環境変化に対してむしろ脆弱になっている。

なんで在庫を絞るのかというと、それは利益追求のためである。

利益をまじめに追求するあまり、工場を海外に設け、在庫をしぼる。

勝者がますます筋肉質になるのと並行して、私たちはリングに上がるために過酷な減量が強いられている。

体脂肪率をぎりぎりまで下げたばかりに、風邪にかかりやすくなっているわけだ。

 

今後AIが発達すると、「新型ウィルス蔓延リスクパラメータ」とか、「インバウンド客減少リスクパラメータ」とかを織り込んだ生産量や顧客バランスを提案してくれるようになるだろうか?

目先の利益最大化なのか、のんびりとした安定的経営なのか、経営者の好みを入力すると、適切な事業計画をつくってくれる。

AIにより、利益追求ではないマネジメントの方法論が現れ、より幸せな社会が実現すると考えるのは楽観的過ぎるだろうか?

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