ロリケンで『格差の起源』(オデット・ガロー、2022年、NHK出版)を取り上げた。
ロリケン
30万年前にホモ・サピエンスがアフリカに現れ、6~9万年前にアフリカの外に移動し始めた。
その長い長い歴史を辿り、発展した(一人当たりの所得が高い)集団(国)と、そうでない集団の格差がなぜついたのかを説明する。
すなわち、成長の鍵は何か。その鍵をつかんだ集団(国家)と、そうでない集団の差は何かを指摘する。
肥沃な大河の周りに出現した4大文明や、その後農業が盛んだった地域は、結果として発展が止まっている。
結論としては、「多様性と、結束力の、ちょうどよいバランスをつかんだ集団」が成長した。
多様性と集団の結束力(凝集性)はトレードオフ関係にあるから、そのバランスが肝である。
多くの人の直観と経験則に合致する結論だと思う。
「人類の歴史をひもといた、経済学の大先生もそう書いてましたよ」というトークには使えると思う。
とはいえ、国、自治体、企業などの集団を成長させ、格差をなくすための未来の処方箋を導くには、いかんせん抽象度が高すぎる。
出アフリカ後の10万年を、人間の頭脳で理解可能な情報量に圧縮するゆえ、議論の単純化はまぬがれない。
ヨーロッパ社会を成功モデルとするヨーロッパ人から見た、一種の大河ドラマ的エンタテイメントとして見るのがよいだろう。
「司馬遼太郎もそう書いてましたよね」、という感じで。