建築士のニシオカさんに桜橋ビジネス勉強会でレクチャーいただいた。
建物好き、橋好きの小生にとって、建築士はあこがれの職業。
さんざん興味深いお話を聞いた後の最初の話題がこれかと言われると心苦しいが、ゼネコンの人は「あの建物をああやって組み立てた」「この難所をこうやって切り抜けた」という話をツマミに酒を飲むらしい。
地球の上に立てる建物は、人間の考えた設計図面通りに作業をすれば建つものではない。
建物ごとに作るプロセスのドラマがある。
自然を前にした絶望感、ひらめいたアイデア、チームワーク、自慢、妬みなどなど。
建築は実に人間的で、熱い仕事である。
建築の、形のある物理的な仕事に比べ、小生のコンサルティングビジネスは言葉を組み合わせ、書いたりしゃべったりして人に影響を与える仕事。
建築家がアトムに立脚した仕事とすれば、コンサルタントはロゴスに特化した仕事である。
とは言え、建築と言えども人間同士の決め事で立てられるから、法律やら契約やらのロゴスの世界はもちろんある。
ロゴスの世界は国ごとに違う。
国によって地震のあるなしなどの自然条件が違うから、建築基準が違う。
文化背景によって、意匠的にこだわるポイントも変わる。
そういうロゴスの制約で建物が作られているので、各国の建物を一か所に集めて建てるのは一苦労である。
万博のパビリオン建設が進まない背景には、こういったロゴスレベルの齟齬があるようだ。
さて、ビジネス界はDXまっしぐらである。
デジタル記号は機械が情報処理をするためのロゴスだから、ロゴスまっしぐらと言ってもよい。
ChatGPT、BingAIといった生成AIはさしずめ、ロゴス界の新進スター。
それらの輝きが眩いばかりに、わたしたちの関心はロゴス一辺倒になりがちだ。
DXはもちろん大事。そこで負けては退場が宣告される。
でも、それを突き詰めた先には、アトムへの関心の向け方の勝負になる。
自分の身体、五感で認識できる範囲のアトムの世界。
身近な家族、友人、同僚などとのリアルな世界。
足の裏で踏みしめる大地や、肌で感じる風や温度や、においや音や風景。
それらに対する自分固有の感覚を、どうやってロゴスの世界に組み入れていくか。
自分の感覚とアイデアを、どのように言語化し、生成AIなどと組み合わせていくか。
今から考えるべき、いや、今まさに直面している私たちの課題だと思う。