株主総会には「総会屋」がつきものだった昭和のころ。
こわもての人たちが総会中に大声で恫喝し、経営陣をビビらせる。
まるでダンプ松本やブッチャーの場外乱闘みたいな感じである。
社長・役員を守るため、最前列にはガタイのよい社員が配置された(冗談ではなく)。
最近の総会では、アクティビストと呼ばれる投資家が、少数株主権を駆使してゆさぶりをかける。
ホワイトペーパーなる経営改善の提案書を公にし、「わたしたちは良い経営のアイデア持っているので、取締役に入れてくださいね」などの要求をする。
ビビらせ方も令和スタイルになった。
ホワイトペーパーは、同業他社と比較して成長性が悪いですね、人が多すぎるんじゃないですか。同業の〇〇社はDXでこんな成果を上げてますよ、といった、一般論を組み合わせた施策提案。
こういった一般論は、生成AIが強い。
試しに「日本の製造業の上場企業の直近の通期の有価証券報告書において、ひとつ以上のセグメントのセグメント利益がマイナスの会社を5社挙げてください。その際、セグメント利益がマイナスだったセグメント名も挙げてください」と打ったら、ちゃんと回答してくれた。
「課題と対策案」も尋ねれば30点くらいのことは書いてくれる。
突っ込みどころさえわかっていれば、MBA生のアルバイトでも書けそうだ。
経産省の指針で、株主からの提案には真摯に対応しなければいけないので、今の上場企業経営者は大変だ。
外野から提案されそうな一般論的な施策案を、日ごろから議論の俎上に乗せておく必要がある。
社外役員がボードにいる意義は本来それだから、きちんとしたガバナンス体制も欠かせない。
昭和の株主総会は、怒号が鳴り響くものの、言わばシナリオのあるプロレスだった。
ガチンコ勝負になると難易度が一気に上がる。
令和の世は、何事も日ごろの鍛錬が大事なようだ。